アウトガスデータリスト概説
この項は、「宇宙用有機材料アウトガスデータ集、NASDA-HDBK-1A、宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)(平成11年)」の第2章の内容から、本材料データベースを円滑に運用する上で特に関係の深い部分を抜粋し、再構成したものである。内容確認が必要な場合は、原文献を参照いただきたい。
0.はじめに
このアウトガスデータ集は昭和55年9月以降に宇宙航空研究開発機構(JAXA)及び宇宙開発事業団(NASDA)で取得したデータをまとめたものである。データ取得は、原則としてASTM
E 595に準拠した「標準」条件で実施しているが、必要に応じて、試料、温度、時間、真空度等の条件がASTM E 595に準拠していない「非標準」条件で実施している場合もある。データ適用の際は、記載した「標準」、「非標準」の条件確認を行っていただきたい。
1.データリストについての説明
測定開始日、材料名(製品名)、素材、温度、時間、雰囲気、調整年月日、その他の条件、製造者、材料提供者、アウトガスデータ(TML、CVCM及びWVR)、堆積レベル、堆積グラフ、IR、IRスペクトル、REPORT
No.、用途、備考、膜厚値及び「標準/非標準」の区別が記載してある。
以下、主な記載事項の説明を示す。
(1)アウトガスデータの定義
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a. TML(Total Mass Loss):質量損失比(%)
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{(試験前試料重量−試験後試料重量)/試験前試料重量}×100
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b. CVCM(Collected Volatile Condensable Materials):再凝縮物質量比(%)
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{(試験後コレクタプレート重量−試験前コレクタプレート重量)/試験前試料重量}×100
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c. WVR(Water Vapor Regained ):再吸水量比(%)
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{(吸湿後試料重量*−試験後試料重量)/試験前試料重量}×100
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*:23±1℃ / 50%RHで24時間保管後の重量
(2)堆積
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a)再凝縮物の堆積状況を膜厚計により膜厚の経時変化として測定したものである。尚、膜厚計算に必要な凝縮物の密度は、一律に1と仮定した。
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b)「堆積」欄には、24時間加熱後の膜厚値(単位:nm)を記載した。
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空欄: 堆積データ測定を実施していない。
(3)IR
アウトガス測定時に再凝縮物をKBr板(または岩塩板)に堆積させ、試験終了後、赤外分光光度計によりIRスペクトルを取得した結果を掲載する。
(4)REPORT No.
材料の測定結果が記載されたアウトガス測定報告書の文書番号を示す。なお、アウトガス測定報告書の文書番号は「TK-G-(5桁の数字)」または「TK-PG-(5桁の数字)」となっており、数字部分の上2桁は測定年度(西暦)、下3桁は各年度毎の一連番号である。
(5)用途
材料提供者が提出したサンプル識別票に基づき用途を記載した。従って、この用途が一般的な用途を示すとは限らない。
(6)備考
「非標準」条件での測定データの扱いについては、下記の通り分類した。
「*1」:
ASTM E 595に完全には準拠していない測定であるが、データ取扱い上、ASTM
E 595準拠データと同等であると判断できるものに「*1」を付した。
例えば、低密度の材料等で初期試料重量が基準値(200〜300mg)を満たすことができない場合や、基板を含めてコーティング材等を試験した際に基板重量が計算で算出された場合等が「*1」に該当する。
「*2」:
測定試料について、ASTM E 595に準拠していない測定であり、データ取扱い上、
ASTM
E 595準拠データとは区別する必要があるものに「*2」を付した。例えば、測定試料数が3とは異なる場合、試料重量に測定対象外の部分が含まれており実測でも計算でも分離できない場合、試験時にASTM
E 595の規定とは異なる大口径試料室を使用した場合等がこれに該当する。
「*3」:
測定条件について、ASTM E 595に準拠していない測定であり、データ取扱上、
ASTM
E 595準拠データとは区別する必要があるものに「*3」を付した。例えば、加熱温度、再凝縮温度、試験時間、真空度等がASTM
E 595の規定と異なる場合や、秤量が通常使用しているミクロ電子天秤よりも精度が低いもので実施された場合等がこれに該当する。
2.データの数値について
(1)表示桁
アウトガス測定報告書では各データの数値は小数点以下第3位(昭和55〜56年度取得データの一部は第2位)まで記載してあるが、本データ集では第3位を四捨五入して、第2位まで記載した。
(2)標準偏差
各データの数値に続いて、±表示してある数値は、3個の試料の標準偏差値を示す。
(3)未測定個所
空欄または「−」が表示された箇所は、その項目が測定されなかったことを意味する。
(4)誤差
TML、CVCM、及びWVRの数値は、重量変化に基づき算出するため、秤量による誤差を含んでいる。従って、再凝縮物がほとんどない場合、測定誤差によりマイナス表示となったものもある。